なぜ分析するのか?|試合・選手分析の目的とその本質

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はじめに:分析とは単なる“評価”ではなく“課題の発掘と解決策の模索”である

サッカー指導の現場で「分析」と聞くと、多くの人は“試合を振り返って良し悪しを判断する”というイメージを持つかもしれません。
しかし、本質的に分析とは、単なる評価ではなく、現象から問題や課題を発掘し、その解決策を模索すること。そして、それを通してチームや選手のパフォーマンス向上につなげることが目的です。

自チームや個人のパフォーマンスを客観的に見つめ、なぜうまくいかなかったのか、なぜ成功したのかを言語化し、次のトレーニングや試合に反映する。
これこそが、サッカー指導者が「分析」に取り組む意義だと言えます。

分析がもたらす3つのメリット

分析がうまく機能すると、チームに以下のような好影響をもたらします:

  • ✅ 仕事の方向性を示す
    何を改善すべきか、どこに取り組むべきかが明確になり、選手やチームにとって「次の一歩」を示すことができます。目的がはっきりすることで、日々のトレーニングに意味を持たせることができます。
  • ✅ チーム内の共通認識づくり
    同じ映像やデータを用いて分析結果を共有することで、スタッフや選手の間に現状に対する共通理解が生まれます。方向性が一致すれば、トレーニングや試合中の連携も自然と高まります。
  • ✅ 規則性と法則性を見出せる
    分析によって、チームの行動や結果に一定のパターンや因果関係を見出すことができます。
    「〇〇をしたことで改善できた」「〇〇をした結果うまくいかなかった、では次はどうするか?」というプロセスに、根拠(ロジック)を持たせることで、取り組みの有効性が高まります。
    ※ここで大切なのは、“必ず結果が出るか”ではなく、“改善への論理的アプローチが存在するか”です。

試合や選手の“何”を分析すべきか

分析においてもっとも重要なのは、「何を見るか」という視点です。
単に「勝った/負けた」「点を取った/取られた」といった結果に目を向けるのではなく、その背後にある“プロセス”に注目すべきです。

  • トレーニングしてきたゲームプランを実行できていたか
  • 攻撃の際に、何ができていて、何ができていなかったのか
  • 選手のポジショニングや判断は妥当だったか

技術的・戦術的な側面だけでなく、「認知 → 判断 → 実行」の流れまで視野に入れて分析することが、実践的な改善につながります。

かし、日本の育成や指導現場では、この「認知 → 判断 → 実行」のうち、“判断”や“実行”に偏った分析が多く見られます。

「あの場面は〇〇すればよかった」「シュートのときに体の使い方をもっとこうするべきだった」

といったようなフィードバックは、あくまで表面的な“結果”や“技術”の話です。本当に重要なのは、

  • なぜその判断をすべきだったのか
  • そもそもその状況はどのような条件で起きたのか

といった“認知”の部分を読み解く視点です。この認知が欠けたままでは、チームや選手の本質的な成長・改善は難しいでしょう。なぜなら、最初のプロセス(=認知)を飛ばしてしまっているからです。

分析をチームに活かすために必要な視点

分析は、“何を見るか”だけでなく、“どう伝え、どう活用するか”によって価値が決まります。
その際、以下のような分析サイクルを意識するとよいでしょう:

分析対象の選定 → 原因分析 → 改善策の提案

さらに、映像や数値を提示するだけでは不十分です。
それが何を意味するのかを明確にし、言語化して行動に落とし込むことが、指導者としての大切な役割です。

「何が起きたか」だけではなく、「なぜそうなったのか」「次にどうするべきか」また「なぜそれをするべきなのか」「どうやって実行するべきか」まで導くことが、分析を現場で活かすポイントになります。

この章で学ぶこと(=章全体のガイド)

この「第3章:分析」では、以下のような内容を体系的に紹介していきます:

  • 試合分析に必要な基礎知識
  • 試合分析の流れとチェックポイント
  • 自チーム分析・対戦相手分析:戦術的な違いや準備の方法
  • 選手分析:ポジションやグループごとのチェックポイントと面談方法
  • 分析の伝え方:選手・スタッフへのフィードバックの工夫

まとめ:分析とはチームを前に進める“道しるべ”

サッカーは相手がいて、複雑で常に変化するスポーツです(=カオス)。
だからこそ、そのカオスを整理し、チームや選手が日々の活動・仕事の方向性を明確にするために、分析は必要不可欠です。

分析=チームを前に進めるための“道しるべ”
そう捉えて、次回からは実際の分析手法や現場での活かし方について深掘りしていきます。

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