1. はじめに:なぜこの4つの用語をセットで覚えるのか?
スペイン語で使われるサッカー戦術用語は、単語単体では意味がつかみにくいことがあります。しかし、それらは文脈やプレーの流れの中で理解することで、初めてその本質が見えてくるものです。
今回取り上げる「Fijar(フィハール)」「Dividir(ディヴィディール)」「Temporizar(テンポリサール)」「Replegar(レプレガール)」の4語もまさにその代表例。
特に「守備に切り替わる瞬間」から「自陣に戻ってブロックを形成するまで」の一連の流れの中で、スペインの現場ではこの4つの動作・概念が連続して登場します。
試合分析や指導においても頻出で、選手との共通理解を築く上でも重要なキーワードです。
2. 用語解説と使い方
◾️Fijar(フィハール)
「相手を引きつけて固定する」
攻撃側の選手が守備者を引きつけ、他のスペースや味方を活かすためのアクション。
例:ドリブルで1人を引きつけることで、他の味方に時間とスペースを生み出す。
◾️Dividir(ディヴィディール)
「分断する・分ける」
ボールを持っていない選手が、ボール保持者や相手から離れる横方向の動き。
例:2対1の場面で、保持者と逆方向へサポートに動くことで守備者を“割る”。
◾️Temporizar(テンポリサール)
「時間を稼ぐ・遅らせる」
守備側が数的不利、または陣形の整理ができていない時に行う、後退しながら相手の進行を遅らせるアクション。
例:1対2の状況で、前方に飛び込まず、後方に下がりながら味方の帰陣を待つ。

◾️Replegar(レプレガール)
「帰陣する・戻る」
自陣方向に素早く戻るアクション。
例:ボールロスト後、全体で素早く引いて守備を整える。

3. 4つの用語の関係性(セットで理解する)
これらの用語は、攻守の切り替えにおける“連続した流れ”の中で理解することがポイントです。
(例:ボール奪取)→攻撃への切り替え(少数の数的優位)
- Fijar(フィハール):ボールを保持者がドリブルして相手を引きつける。
- Dividir(ディヴィディール):味方がボール保持書・相手から離れ、スペースを活かす。
(ボールロスト)→ 守備への切り替え
- Temporizar(テンポリサール):数的不利の中で時間を稼ぎ、味方の帰陣を待つ
- Replegar(レプレガール):全体で自陣に戻り、守備ブロックを形成する
このように単語を単体で学ぶのではなく、「局面の流れ」とセットでイメージさせることで、選手の判断力と理解力を高めることができます。

4. 指導現場での活用法
選手にこれらの用語を指導する際は、状況に応じた“セット理解”を意識させることが非常に重要です。
▷ 数的不利な守備時
- 守備側が戻りきれていない、あるいは1人少ない状況では
→「テンポリサール!(時間を稼げ)」 - その間に他の選手が素早く「レプレエガール」して、守備ブロックを整える
▷ 数的優位の攻撃時(2対1、3対1、3対2 など)
- ボール保持者には
→「¡Fija!(フィハレ)」=相手を引きつけろ - ボールを持っていない味方には
→「¡Divide!(ディヴィデ!)」=スペースへ離れて相手を分断しろ
このように、スペインの現場ではこれらの用語がそのままショートコーチングの指示語として使われています。
選手にとっても、短く明確で、状況判断に直結するキーワードとして機能します。
その後、「今の場面、フィハールできていたか?」「そこからのプレーの判断はどうだっだ?」といった振り返りを通じて、選手自身に思考させることでプレー理解が定着していきます。
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