日本とスペインのサッカー指導者、何がどう違う?― 現場で感じた5つの違い

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はじめに

サッカー指導者として日本とスペイン、両方の現場を経験する中で、「指導者像」の違いを日々実感しています。
文化、教育、そしてサッカーに対する価値観の違いは、指導スタイルや選手との関わり方に大きく影響を与えます。

今回は、スペインでの6年間の現場経験をもとに、「日本とスペインのサッカー指導者の5つの違い」について具体的に紹介します。


1. 選手を「育てる」のか「導く」のか

日本:正解を与える指導

日本では、選手に「正しい技術」「正しい判断」を与えることが指導者の役割とされています。
コーチングは「修正」の意味合いが強く、間違いをその場で正すことに重きを置く傾向があります。

そのため、選手が基本的なサッカー戦術の知識をもとに、“考える”と言う過程を飛ばしています。

スペイン:選手に考えさせる指導

一方スペインでは、「答えを教える」のではなく、「問いを与える」スタイルが基本です。
トレーニング中、選手に対して「今、なぜそう動いた?」「他に選択肢はあった?」と問いかけ、判断力と認知力を育てます。
指導者は“答えを持つ先生”ではなく、選手を“導くガイド”のような存在です。

もちろん、この問いに答えるためには、基本的なサッカー戦術の知識が必要です。

そのため、選手に考えさせるために、「選手にサッカーを教える」と言う過程が存在します。


2. ライセンス制度とプロ意識の違い

日本:指導資格があっても、キャリアに直結しづらい

日本にもJFAの指導ライセンスがありますが、地域や環境によって資格の価値や影響力にバラつきがあります。

これは、日本の育成年代にサッカー協会主催のリーグ戦やその仕組みがまだ根付いていない事が原因と考えられます。
そして、時には「経験年数」や「人脈」が優先される場面もあります。

スペイン:資格=現場の入口。競争の厳しさも

スペインでは、サッカー指導者ライセンスがないとチームで指導をすることができません。
しかも、指導者の数も多く、毎年多くの新しい指導者がライセンスを取得してくるため、常に「学び続ける姿勢」が求められます。
つまり、資格はスタートライン。そこからが本当の勝負です。


3. 現場での立ち振る舞いと声かけ

日本:上下関係・統率重視の文化

日本では、指導者は「リーダー」として、規律や統率を重視します。
敬語文化や上下関係も影響し、選手との距離感が比較的遠いこともあります。

スペイン:フラットで積極的な対話文化

スペインでは、指導者と選手がフラットに対話するのが一般的です。
選手が自由に意見を言ったり、指導者が選手に笑いかけたりするシーンも珍しくありません。
特に育成年代では、信頼関係を築くために「積極的なコミュニケーション」が必要とされます。


4. トレーニングの構成と役割分担

日本:指導者が全てを担う傾向

トレーニングの設計、準備、実施、フィードバックまで、全てを1人でこなすケースが多い日本の現場。
その分、指導者への負担も大きく、専門性が分散してしまうこともあります。

また、最近では指導者ではなく、選手がトレーニング設計を行うところもあります。

スペイン:チームスタッフでの分業体制

スペインでは、ヘッドコーチ、アシスタント、分析官、フィジカルコーチなど、それぞれが明確な役割を持ってトレーニングを構成します。
指導者は「全てをやる人」ではなく、「全体を調整し、最適化する人」という立ち位置です。
結果的に、選手1人ひとりに対してより専門的で質の高いアプローチが可能になります。


5. 指導者としての学び方・成長の姿勢

日本:経験や年功が重視される傾向

日本では、一定の経験を積んだ後に「自分のスタイルを持つ」ことが良しとされることが多く、
外部から新しい視点を取り入れることに慎重なケースも見られます。

スペイン:常にアップデートが求められる

スペインでは、指導者同士がトレーニング後に毎回「振り返り」を行い、
「何が良かったか」「次に改善することは何か」をすぐに話し合います。
また、定期的なセミナーやクラブ内勉強会が当たり前のように行われており、
“学び続ける指導者”が評価される文化です。


おわりに

日本とスペインの指導者像には、文化・制度・哲学の違いから生まれる様々な差があります。
しかし、両国に共通しているのは「選手のために」という指導者としての根本的な姿勢です。

大切なのは、一方が正しいということではなく、両方の良さを理解し、自分なりのスタイルに落とし込むこと。
この記事が、あなたの指導者としての在り方を考えるきっかけになれば嬉しいです。

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